無雲が友達と昼呑みに出かけた日、おいたんは障害者手帳の受理証を持ってハローワークに行きました。障害者枠での就活をスタートさせるためです。
「手帳が発行されるまで、企業は相手にしませんよ」
おいたんに投げかけられたのは、励ましでも何でもなく、こんな辛辣な言葉だった。
I市のハローワークの職員さんよぉ、いくら何でもそれは酷くない? もうちょっと言い方とかさ、色々あるでしょう。
無雲は腹が立ったので、翌日複数の障害者求人サイトにおいたんの情報を登録しました。
「二日以内に折り返しご連絡を差し上げます」
という大手のサイトからは何もありません。嘘つきめが!
求人を見ているだけの数日が過ぎ、ある日、その内のひとつからスカウト求人が来ました。新築建売住宅の清掃の仕事です。おいたんは、「よく考えてから受けるか決める」と言いました。
おいたんが悩んでいる間に、私と両親でも家族会議を開きました。
「新築の戸建て住宅か……何かあいつなら傷とか付けそうだな」
「お母さんもそう思うわ」
「そうだよね。無雲もおいたんならやりかねないと思う」
おいたんも、そこを気にしていました。
「俺、新築傷付けちゃうかもしれない。磨きすぎるかもしれないし、うっかり物を壊すかもしれない」
ADHDによる不注意が酷いおいたんには、これはちょっと……な案件に思えました。もう、結果が目に見えるかのようなのです。よって、このスカウト求人は辞退する事にしました。
ここまで色々こじらせているおいたんです。今回は慎重にならざるを得ません。次こそ、おいたんが長く働ける職場であって欲しいと、家族の誰もが願っているのです。
「俺~、にわとりの世話とか、農作物の収穫とかでもいいかも~」
おいたん、少し人間が嫌になって来てる……?
無雲は持ち前の検索能力で、農業や畜産に特化した求人サイトも見つけましたので、そちらも毎日のようにチェックするようになりました。
ハローワークでの求人も、色々見ています。
ただ、つい最近釣りの最中に犬に襲われてけっこうな怪我を負ってしまった無雲は、メンタルがえぐられているので、おいたんの求人探しは鈍化気味です。まぁ、そこはおいたん自身にもお任せしましょう。
それでなくてもほいほいと沢山は出てこないのが障害者枠の求人です。長い目でいかないとなのです。
お金は、いっぱい持ってるわけではない。でも、数カ月暮らすくらいならまだある。何とかなるから、おいたん、働きやすい職場を頑張って見付けようね。
今、世の中はGWの長期休暇中。企業もお休みです。ここでちょっと小休止なのかもしれません。
これからしばらくの『夫は仕事ができません!』は、おいたんの障害者枠での就活の事がメインになると思われます。
障害者手帳は、受理されてから審査があり、発酵されるまでに2か月くらいはかかると言われています。おいたんの等級とか、審査通るのかとかは分かりません。でも、おいたんには障害者手帳が必要だと、私や家族、M先生は思っています。
事態がいい方向に向けばいいのだけど、と祈らざるを得ません。
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