前もって、M先生にはメールで事態を伝えておいた。そして、書類を書いて欲しい事を伝えておいたから話は速かった。
「で、今回は何したの?」
「作業が遅くて雑って言われました……」
「あぁ、それなら、まぁ良かったよ。また誰かぶん殴ったのかと思った」
M先生は、障害者手帳を申請する診断書を書きながら私達と話をしていた。
「あぁ~、エピソードが酷すぎてむしろ書き易いわ」
それ、誉め言葉……?
「先生、年金ってどうしよう」
「あ~、それはもっともがいてあがいて頑張ってから考えようか」
「分かった~」
無雲はM先生にはタメ語で話す。それだけ心を解放しているという事なのだ。
M先生は、スラスラと『書き易かった』書類を仕上げて、「じゃ、市役所行ってらっしゃい」と言った。
市役所は、病院とは正反対の位置にあるけっこう距離がある場所だ。そこまでおいたんと電チャリで爆走した。まさか、週に2回もこの距離を走る事になるとは。
無雲は、自分も障害者手帳を持っているので、手続きの為のアイテムは全部用意してあった。だから、手続きはスムーズに出来た。
受理書を貰って、それをハローワークに持って行けば『手帳申請中』の障害者として、就職活動が出来るとの事だった。
この日は金曜日。そしてもう夕方近い。おいたんも疲れたろう。ハローワークには月曜日に行ってもらうことにした。
「おいた~ん、無雲マッ〇シェイクが飲みたいから近くのショッピングモール行こうよ」
「やだ。行かない」
おいたんは元気無くそう言った。いつもなら乗って来るのに、ノリが悪い。それもそうか、ショックだもんな、色々。
仕方なくまっすぐ家に帰った。
おいたんは、終始暗い。帰宅しても暗い。
「明日釣りに行こうよ」
「やだ。行かない」
釣りにすら行かないだなんてもうこれは鬱状態だ。
とりあえずその日は引き下がったが、翌日、おいたんの鬱状態は悪化しているように見えた。だから、おいたんを無理やり家から出そうと思った。
「釣り行こうぜ~。無雲ちゃん釣りしたいなぁ。だからお願い聞いて♡」
おいたんは、渋々了承して釣りに行くことになった。
江戸川は、いつもの通り穏やかだった。そして、おいたんと無雲はポイントを3か所移動しながらまったりと釣りをした。おいたんも楽しそうだった。気晴らしになったなら良かったよ、おいたん。
おいたんは、ちょっと元気を取り戻したようだった。
ゲームをする気力も戻ってきたようだ。でも、多分心中はまだ沈んでいるのだと思う。
次回は、おいたんが『障害者』として就職活動をスタートした話です。
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